人は鏡である。見事なまでに己を映し出す。
●040202
思いきりポカをやりました。制作中マシンの音量を絞ったままでした。
抑えた音量で確認をとっていたために音楽の高音部のみで判断していました。
結果として内容にそぐわない選曲をしていたと言う訳です。
再考します。いやはや。
●040201
一気呵成。公開。もう語る事もなくただご覧頂くのみです。
データ
フラッシュデータ8.9MB
画面サイズ600×300ピクセル
レート12.0fr/sec
swfサイズ1904KB(1949765B)
トータル5674fr(472.8s)
プリロード253fr(21.1s)
ライブラリアイテム数181
物語 終盤台詞が少なく急展開しますのでまごつくかも知れませんが、
下記をお読みになられますとご理解頂けるかと思います。
| 鏡 人は鏡である 見事なまでに己を映し出す だが合わせ鏡は |
|
| 応仁の乱の頃 | |
| 一人の琵琶法師が京から逃れて相模の国、草深い六浦に下った | |
| 旧知を頼ったものの主人は死んだと聞かされる | |
| 法師がその様子を聞くと、女は主人の見た夢の話をする | |
| 一の晩に女が現れ情けを懸ける | |
| 二の晩に女が現れ飯を与える | |
| 三の晩に女が現れ喉の乾きを訴える | |
| 主人が水を汲もうとすると水面に女が映り驚く | |
| 不思議な夢を見たと笑う | |
| 女が愛用する鏡を見るとそこには主人の顔が映るが 振り返ると寝所から主人の姿は消えていた |
|
| その後主人は鏡に映るが女の姿は映らなくなる | |
| 二つの魂が変移し女は若返りを見せた | |
| 館の者達は気味悪がって次々と去って行き今は女一人になる | |
| 己の独占欲が主人を殺してしまったのかと女は嘆く | |
| 嘆く女 (1997年の異夢譚第一稿はここまでであった) |
|
| 業の深さを女の言葉から導き出し諭す法師 | |
| 女の傷を癒そうと弾き語りを始める法師 | |
| 歌うに連れ琵琶の響きが高くなる | |
| 止めるように懇願する女 | |
| 己に酔った法師はそれと気がつかない | |
| 琵琶の響きで合わせ鏡の一面が割れる | |
| 同時に法師は口と耳を失う | |
| 女が消え主人の陰が現れる | |
| 法師を嘲ると共に過去に起った事柄を語る | |
| 魔性の鏡と共に現れた男と密通を重ねる女 | |
| 全ては鏡によって仕組まれた事に 気がつかぬまま不義を重ねる女 (情け) |
|
| ある日 それを知るところとなった主人は男を斬り殺し (飢え) |
|
| 女を瓶の水で溺れ殺す (渇き) |
|
| 深く愛していた者を許さず殺した主人は自責の念から自害する 心を覗き弱さを喰って鏡は今まで多くの人間を封じて来たのだった 止まる事無き無限地獄こそ合わせ鏡の正体であった。 |
|
| 合わせ鏡は二重で未来永劫に慚愧の念を宿し続けるが 割れた事により主人は罪苦から解放される 鏡は己を割り無力にした法師から全てを奪う為に取り憑く 了 |
法師が聞いた存在は初めから鏡の作り出した世界だったのです。
●040125
昨年11月04日からだいぶ時間が経ちましたが、ようやく制作を再開しました。間を開け過ぎた為、見直しだけで今日と言う日は終わりそうです。2月下旬には公開したいと思います。
●031104
かれこれ1週間仕事や諸々の事情の合間に女が顔を上げるシーンの頭部を制作。側面をトウイーンにしその動きを正面 に置き換えて36フレーム。正面顔は対称なので変化は半分だけ作って確認し後で反転したものを繋げます。3D手法で良くある作り方です。
●031027
久し振りにここへ書きます。もう1ヶ月も経つのにまるで進んでおりません。正確に言えばフレームバイフレームが根気のいる作業で仕事の合間に進行させるにはかなり時間の確保に難しいものがあり、1週間に12フレームとかそういった塩梅です。徒競走で若い時はゴールが見えた時には果 たしていたのと異なり、現在ではゴールが見えているのに足がもたつき半ばで蹴躓いた。そのような感じです。
●030930
kagami0から更新を重ねてkagami11まで来ました。出来たところまで通しで観ました。事前に何度でも見られる。これだけは制作者の特権です。ゲップが出るほど観ました。結果 、気に入らなかった箇所が何点かありましたので再度作り直しです。シナリオ(最下段、正確に言えば単なるお話)を読んでいると2分くらいで終わる物語りをアニメーションにすると長くなります。行間を絵にしなければならないからですが、例えば「それきりでございました。」を絵にした場合どのようにそれきりだったのかと言うのが結構難しいです。山口百恵がこれっきりと歌う際に振り付けがありますがあのような感じと申せましょう。少し饒舌気味を引き締めつつあります。もうしばらくお待ちくださいな。
●030927
70%くらいまで進みました。作画に並行して音入れもしています。これは作り手の都合によるもので、まずオリジナル物語を作ってからそれに合わせてシーンを繋いで行く私のような一人で完結させる手法では音はそれらの印象を深くする為にのみ存在します。音に触発されて創作される方や、先に音楽自体に意味がありそれをシナリオとして作る場合は別 として、大抵は音入れは後にするものなのですが、フラッシュアニメーションをWebにアップする場合には、私は並行して進行させます。フラッシュ自体は軽くダウンロードも容易ですが音はかなり容量 が重くなります。アニメーションは流れるのに音を挿入した途端、いかにストリーミング技術があったとしてもぎくしゃくした絵では興醒めです。それでローディングやストリーミングを施しながらシーン毎に伸張短縮します。私の場合は時間の長い作品が多いので後でこれをするとなると非常に厄介です。12fpsとして上映時間を5分としますと3600フレーム。ムービープレーヤーで確認を取ると時間ばかり掛かって辛いです。もっとも微調整は全編通 しとなります。今回は頭に線画を多用した為にパソコン上の描画に時間が掛かり、このローディングの仕込みにちょっと苦しんでいます。ちなみにストリーミングは今でも56kを基本としています。スクリプトはgotostopとifだけですからプレイヤーも4のままです。
●030926
琵琶を奏でる法師の試作。300フレーム。ロングで制作していると調律、構え、演奏などに手首の返しなど煩わしいレイヤーの上下関係が発生する。作業を短縮して効果 が同じならば拡大縮小など別ショットにしてカットの積み重ねの方がはるかに楽だ。試作は通 して制作したが、実際には単調さを避ける為にリズムに合わせた構成となるだろう。
●030920
制作期間をほぼ1ヶ月程度と見込んでいたため、実は9月18日まで専用のページを割いてノートを書くつもりがなかった。特段新しい事をやっている訳ではなく「刻の眷属」制作にあたり自分の技術の集約もしくは確立を考えるために「竜宮異聞」を制作しており、ある衝動から本作を先行させたからである。かような事を書く時間があるのならば制作を進めるべきであるが、生来の記録好きが嵩じての公開である。下記画像は光の粒が収束シーンであるがデフォルトならばフラッシュのトゥイーンで可能だが、またストラタでのファウンテンエフェクトも考えられたが、やはり手で描くべきだろうと落ち着いた。赤のラインは軌跡。これはシェイプを利用してうねらせる。後はそれにそって適当にブラシで描き足していくだけである。結構簡単に素敵になる。(筈である。)
●030919
下記記述はそのほとんどが制作にあたっての事情背景が多かったのであまりタメになりません。この「鏡」はそもそも夢から始まります。夢の根拠がまったく無い、とは言えない。 恐らく自然系番組のかまきりの交尾を見たせいであろう。 交接中に雌が運の悪い雄の体を頭からぼりぼりと食う例のシーンだ。 素面の時は何でもない極ありふれた映像でも酔った頭で見ると脳の何処かに格納され、夢に再現されるらしい。 それも人間としてだから恐ろしい。
結構、痛み等も感じます。 桑原、桑原。 脚色する前の本来の夢(鏡壱)はちょっとオトナチックなので子供の目に触れぬ 様、最後に置きます(^^;。
また夢は辻つまの合わぬ事が多く自他の区別も判じ得ない。 話の様に流れた訳では無いので念の為。
「竜宮異聞」でも「墨女」に比較してトゥイーンだけではなく圧倒的にフレーム単位 の描画が多く、それが制作日数を増大させているのですが、今作の「鏡」でもエフェクトはどうしてもそれが多くなりました。1コマ1コマちまちまと描いています。もう根気だけですね。
コーポレートマークの回転はストラタスタジオプロのswf書き出しに手を加えました。「竜宮異聞」で制作したイメージを今後全作品に使用します。炎は初期マクロメディアフリーハンドで描いたラインワークをswfに変換しイレーザーで消しフレーム逆送りにするか、マスクにするか迷いましたが、やって見ると単純明解のコンセプトには合致するが「美しいが素直過ぎ」て苛立つ物が感じられず破棄。コマ絵にしました。ムラムラするようなどろどろするような粗野な感じが出せたと思います。しかしこれが描画性能を要求し且つデーター容量 を増やしたのです。一貫してインターネット上でユーザーを待たせない、待たせても待った感じを持たせない主義ですから苦しい結果 となりました。スタート時の工夫が必要となりました。いわゆる見せないローディングです。
corporatedmark_rotation
●030918
タイトルを予告編に替えて公開開始する。
●030917
「鏡」はやっと210秒、もっとも60秒はタイトルだけど(^-^; 1.2MB
●030914
8月26日以降鏡のストーリーは進行していない。忙しかったせいもあるが、これに費やした。60フレームです。
●030913
墨女は35分と言う長さの印象からかブロードバンドでなければ駄目だと思われているらしい。長いイコール重いと勘違いされている為だ。合計すれば6.12MBだからまあ重いと言えばその範疇に入るだろう。しかしマシンパワーも墨女クラスならさほど要求はしないし、ISDN回線ならストリーミングによってストレスなく鑑賞できる。それこそフラッシュの真骨頂なのだが。もっともその時間を耐えて見せられるかが最も重要な事に変わりはない。
●030826
なかなか進まない。254kb
●030801
「鏡」は主に仕事の影響で3.2周年記念になりそうです。
●030731
こりゃ完全に駄目だわ。もう31日ですからね。「鏡」の公開はいつ?って質問は禁句ね。
●030723
鏡の一シーン「変化」の為の6秒ほどの試作。制作時間は問題ではないがこれだけで4日間も経過しているにも拘わらず現在その効果 を疑問視する自分がいる。技術は見せる為の物ではないが見せる為には技術は必要だ。最大の技術とは「センス」である事を実感している。三周年記念としての8月1日公開はほぼ無理。
●030717
琵琶法師。
まんいつそれが真実だと、いや、それが不実だとは盲の私には分かりませぬ故はばかりながら憶測にて申し上げる。女房殿が御主人殿を奪われてしまったのだと申すのならば、あなたの愛が重すぎて御主人殿の両の腕では支えきれなかったと思うのです。あなたの愛は広いのではなく深いと申し上げる他ございませぬ 。情と言うものは他者には伺い知れぬ物と存ずる。広大無辺にしてつかみ所もござらぬ 。これがそうだと自ら信じ込むより術はござらぬ。しかもそれが己の情愛だと信じても他者から見ればまたそれも自ずと形を変えて遥かに異なる形になるやも知れませぬ 。あなたの心内の御主人殿はあなたの心外の御主人殿と異形であったのかも知れませぬ 。あなたの思う御主人殿ではなく、御主人殿の思う御主人殿を思い遣りなされ。さればいずれは帰ってまいりましょう。
●030707
これが見えぬのかとあなたは酷き事を仰る。盲の私にあなたを見ろと仰るか。改めない限りその人は孤独になって行くばかりで行き着く先は後悔の光さえ届かない閉鎖地獄に落ちる事だろう。それを不条理と言うならばこれほどの滑稽は世にないだろう。
●030706
見えぬ者に見える話をしても仕方がなかろう。同じ夢を見る事は不可能なのだ。しかし同じ「ような」夢ならそれが可能だ。自分はその可能性をテーマに異夢譚を綴る。あからさまな夢は語る事が出来ない。それは自己否定に等しい。故に自己を脚色する。ならば自己とは何であろうかと考える。本能の自己、作られた自己。作った自己。いずれも誤りではないが、多重の自己を圧殺して健全を装おうのならばいっそ不健全である事を肯定して自己否定から逃れなければならない。
●030705
鏡は公平でありまするが、時として見えぬものが見えるようになる人の心を映す恐ろしきものと聞き覚えまする。私は盲ゆえ、それを見る事適いませぬ 。ある者は己の罪業を見る事ためらう為、鏡を恐れまする。したが見るとは己の瞳。何のやましき事なければ鏡を恐れる事不要でございまする。
違うなあ論点がずれてきている。ここはあくまでも罪業を悔いる女房の気持ちを琵琶法師が心の目で見て諭す。そのシーンだ。一般 論に持って行けば焦点がぼやける。二稿のままに進行しようと考える。
●030704
鏡は人の心。あなたが欲(よく)するゆえ、映る(うつる)すべてがあなたのもの。私は盲(めしい)ゆえ、あなたが見るものは見えませぬ 。したが、懺悔の海に沈むあなたの心は見える。案じなさるな。あなたの欲は涙とともに消え去りましょう。されば、御主人はやがては解き放たれる事でしょう。二稿終了。追いつ追われつやな。
●030703
欲しいのは体だが、いつのまにか心が欲しくなった。心をつなぎ止める為に体が必要になった。目に見えぬ 存在を、目に見える形や手で触れる形に置き換える危険で粗雑な衝動を排除する事ができるのだろうか。琵琶法師。人の心とは鏡のごときもの。あなたが目にするものはあなたの心。あなたの心が欲したものゆえあなたが見るものすべてがあなたのもの。私は盲ゆえ欲するものを知りませぬ 。だから、私はあなたの後悔に満たされた心が見える。やがてはそれがあなたの心からあなたの欲を押しやる事でしょう。あなたの心に幽閉された御主人はやがては解き放たれる事でしょう。涙枯れるまでお待ちなされ。一稿終了。
●030611
物を考えたり作ったりするには衝動が必要です。小生の場合それが特に強いように思えます。昨日で敬愛すべき人を失ってちょうど一年経ちました。昔の作品でありながら「鏡」を急に作りたくなったのは、恐らくそれが原因です。自分にできるたった一つの供養かも知れません。 「異聞」はまだ90秒。シナリオの1パーセントに過ぎません。どう考えても久多ネット3周年に間に合いません。「鏡」を8月1日に公開する事に決めました。
●030609
下記の1999年7月創作の鏡シリーズのいずれかを白ライン、黒ライン、黒、赤のみで演出したフラッシュイラストメーション制作したく欲望が出た。妖艶にして奇怪。徹底したアイテム削除と白黒赤の限定色、限定した動きで構成したい。出来るかな、出来るとも。問題はいつ「やるか」だけど。
異夢譚(鏡壱)
相模の国、六浦の在に人里離れて館があった。
応仁の乱の戦火を逃れて、男が旧知を頼りその日の夕刻に門を潜った。
だが、案内を乞うて出て来たのは、いと若き女で、聞けば側女で一人だと言う。
訳を話すと、 あいにく我が御主人殿は昨日身罷りましてございますと答えた。
奥に通された男は、何とたった3日で死んだと驚き、してその様はと聞く。
男の左手に小さく座り目を伏せたまま、女はぽつりぽつりと促されるままに語り出した。
一日目、主人の夢の中に、長旅の途中であろうか、やつれてはいたが大層器量が良く、その立ち居振る舞いから由緒正しき家柄の出と思われる女が現われ言った。
喉がひどく乾いております。
どうか水を一口下され。
二日目、夢の中に同じ女が現われた。
どうにもひもじくてなりませぬ。
どうか飯を一口下され。
三日目、夢の中に再び女が現われた。
この世に頼る者も居りませぬ、どうか私に情けを下され。
夢の中で徐々に生気を取り戻し、日毎に美しさが増して来る女に心奪われた主人は、願いの全てを許した。
次の朝、夢から覚めた主人が乾いた喉を潤す為に水瓶を覗いたところ水面の、そこには己の姿はなく女が映っていたと言う。
それきりでございます、御主人殿が消えたのは。
と言ったまま女は押し黙る。
男は、
何と不思議な、それでは夢に憑り殺された様なものではないか。
したが、そなた先程は死んだと言い、今消えたと申したな。
よもやそなたが…、いやいや、もはや消えようと死のうと居らぬ者の事情など、あれこれ詮索してもな。
言いながら、じじと鳴る燭台のほの暗い揺らぎの中にうつむいたままの女の様子を上目使いに眺める。
良くよく目を凝らせば、ふっくらとした頬、濡れた様に紅い唇、陰りの濃い目の辺り、固い袷の内に密やかに上下する胸、衣の皺によっても覆い隠しも出来ぬ 張り詰めた腰と太腿、しなやかな指先など、都でも滅多には目に触れぬ女の妖艶さであった。
邪心に湧いた欲情のままに、つと女に寄り右手首を引き掴み、左肩をたんっと突くと、驚き逃れようと腰を浮かし掛けた女は、ひいっと短い悲鳴は空に残し男の体の下へと転び込んだ。
割れた裾から真白い両の太腿が覗くと男の込めた力は止まるを知らず、女は一たまりも無く組伏せられた。
激しい揺らぎの中で、 男が好奇から女の苦悶の様子を見ようとすると、
女は別人のような恐ろしい力で四肢を絡め、
お前様も、あの男と同じでございましたな。
我が肌に触れる者は、 一日目には血をすすられ、 二日目には肉を食らわれ、 三日目には魂まで奪われて、御主人殿が夢に見た女とは、 ほれ、お前様の眼にも映っておりましょう
水銀の鏡の如き女の目は、ほんの瞬きも見せぬまま男を捉えていた。
※案内(あない)、御主人(おあるじ)、飯(いい)、空(くう)、眼(まなこ)
990702(C)proseed corporation QUTA1999
異夢譚(鏡弐)
相模の国、六浦の在に人里離れて館があった。
応仁の乱の戦火を逃れて、一人の琵琶法師が旧知を頼りその日の夕刻に門を潜った。
だが、案内を乞うて出て来たのは若い声の女で、娘かと思ったが、聞けば妻女で一人だと言う。
訪れた訳を話すと、あいにく我が夫は先頃身罷りましてございますと答えた。
奥に通され、様子を問う法師に女はこう語った。
「ある朝、夫は夢を見たと申しました。夢の中に私が現われ情けを下されと言うので、心優しき夫は了としてくれたそうにございます。あくる日、やはり私が現われ、ひもじそうな様子に飯を下されたそうにございます。そして次の日再び私が現われ、喉がひどく乾いている様子に、水を汲もうと瓶を覗いたところ水面 に己の姿はなく私が映っており、驚いた処で夢から覚めたそうにございます。 夫は笑いながら、不思議を見たものよと申しました。床から出て髪を直そうと私が鏡を見ると、健やかな夫の顔が側近くに映るのでございます。朝から何えと艶を含んで振り返りますと、床には夫の姿が無くそれきりでございました。」
「それからでございます。我が身は在るに決して映らず、夫ばかりが鏡に映る様になったのでございます。そればかりか、あろう事か二つの魂が一つになったが故に、それが濃くなり私自身が若返りを見せてしまったのでございます。屋敷の者達は気味悪がって次々と去り、今は私一人だけになったのでございます。」
「夫婦が一心同体とは誠の事でありますなあ。したが、私の欲が勝りすぎました。最愛の夫に求める余りその心のみならず、その体をもすら我が物にしてしまったのでございます。」
語り終えると女は、止まるを知らず嗚咽の界に沈んでいった。
※水面(みなも)、勝り(まさり)、止まる(とどまる)990703-990706
久多@麩羅画堂